平日の昼休み、駅前のドトールでコーヒーを飲もう、とドトールへ向かうも、レジがえらい行列だったため、断念した。
飲み物だけで休憩できるところは他にないかしらん、とぷらぷらしていると、純喫茶を見つけた。
私は純喫茶が好きである。
茶色を基調としたレトロな雰囲気、暗めの照明、広い空間、時間がゆったり流れる感じ、都会の中の隠れ家のようで、とってもとっても落ち着くのだ。
ただ、初めて入るお店は少しドキドキ。
ドキドキしながら扉を開けると、東京とはとてもじゃないが思えない、ゆったりとした時間が流れている。
マスクをしていたが、コーヒーやホットサンド等の良い香りが漂ってくる。
さて私は胃に何か食べ物を入れるとすぐに眠くなってしまうので、仕事の日は昼ごはんを食べない。
野菜ジュースだけで済ませるのが常である。
このため、アイスコーヒーだけ注文するつもりであったが、良い香りに誘われたのと、ホットケーキが美味しそうすぎたので、ホットケーキも注文してしまった。
う、うまあい。
純喫茶にはさまざまな人がいた。
文庫本を読んでいる、長身・細身・黒縁メガネの大学生と思しき男。なんだか森見登美彦の小説に出てきそう。
お昼の時間を優雅に過ごす主婦のおばちゃん×2。ツナサンドの「ツナ」が一体何なのかわからず、店員さんに聞いている。ツナ缶を知らないのか、あんたは。庶民感覚というのが無いのだろうか。金持ちか。
少し高い声で早口でしゃべる大学生のヲタクっぽい男と相槌のみを打つ寡黙な男の2人組。
このヲタクっぽい男は、「エヴァはなんで評価されていないのか、わからない」「ロッキーホラーショーは意味のある映画だなんて考えるのは意味がない」だの、あーだこーだ喋っている。
エヴァについては全く知らないが、ロッキーホラーショーは意味のある映画だなんて考えるのは意味がないなんて考えるのが野暮だろう、ヲタクめ、でも、ヲタクしゃべりでエヴァを語っているのは何だか素敵だなあ、とか思いながら、ホットケーキを黙々と口に運び、アイスコーヒーで流し込んでいると。
次の瞬間、ヲタクが最高な一言を発したのである。
「まあ、俺はサブカルだからさ。」
サブカル。
サブカル。
サブカルかあ。
「サブカル」と言われると少し馬鹿にされているようで、何らかの嫌な気持ちがするものだ。
少なくとも、私の周りでは、音楽を好む人が多いが、「サブカルだよね君は」と言われて喜んでいる人は見たことがない。
しかし、このヲタクは、どんな文脈でどんな考えを持ってサブカルと言ったのかは不明だが、サブカルを自称しているのだ。
自称サブカル。
ヲタクしゃべりの自称サブカル。
…面白い。
この会話を聞いてなんだか気が抜けて、あまり物事に対して神経質にならなくても良いかあ、と思ったのだった。
ありがとう、サブカルヲタク君。
なんだか良くわからないけどすっきりした。
という出来事がありました。
午後の仕事の時間、ホットケーキを消化するために消化器官がエッサホイサと働き、その代わり脳は怠けたらしく、やはり少し眠ってしまいました。