コワモテなおじさんが、隣の部屋に住んでいる。
コワモテなので当然怖いが、顔を合わせると挨拶をしてくれる、やさしいおじさんである。
このコワモテなおじさんの家は、夏場は、いつも玄関のドアが1/3くらい開いている。大胆な日は、半分くらい開いている。
雨の日も当然開いている。そういえば、去年の台風の日も開いていた。もはやスピリチュアルの世界である。
中を覗くのは申し訳ない気持ちになるので、あまりじろじろと見る気はないが、い草か何かの素材でできた、長いカーテンが垂れ下がっている。
このい草のカーテンのせいか、田舎のおばあちゃん家のような、懐かしい良い匂いが、コワモテおじさんの家からは漂ってくるのだ。
また、ドアを開けてくれているおかげか、夏場に家で蚊に刺されることは、あまりない。
(虫コナーズや蚊取り線香のおかげかもしれないが、コワモテおじさんのおかげということにしておきたい。)
ちなみに冬は、さすがに玄関のドアは開いていないが、風呂場の窓がいつも開いている。
コワモテおじさんが普段何をしている人なのかはつゆ知らず、玄関を開けている理由もコワモテなので聞くことはできない。
理由は知らないが、これからも堂々と玄関のドアを開けて、い草の匂いを漂わせていて欲しい。